就業規則違反の罰則設定と運用

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はじめに

就業規則は、会社と労働者の権利義務関係を定めた重要な社内ルールです。就業規則に違反した労働者に対しては、一定の罰則を設けることができます。罰則は、就業規則の実効性を担保し、職場の秩序を維持するために必要な制度といえるでしょう。しかし、罰則の設定や運用を誤ると、労働者の不満を招いたり、法的なトラブルに発展したりするリスクがあります。本記事では、就業規則違反の罰則設定と運用について、基本的な考え方から実務上の注意点まで、詳しく解説します。適切な罰則規定の設定と運用を通じて、公正で働きやすい職場環境の実現を目指す上での一助となれば幸いです。

就業規則における罰則の位置づけ

就業規則違反に対する制裁の必要性

就業規則は、労働者の行動規範を定めるものですが、規則があるだけでは実効性を担保できません。違反行為に対して一定の制裁を科すことで、就業規則の拘束力を高め、労働者の規律意識を向上させることができます。罰則は、就業規則の実効性を裏付ける重要な柱の一つといえるでしょう。

罰則規定の法的根拠

就業規則における罰則規定は、労働基準法第89条に基づいて設けられます。同条では、就業規則の必要記載事項の一つとして、「退職に関する事項」が挙げられています。退職には、懲戒解雇も含まれるため、就業規則において懲戒解雇を含む罰則規定を設けることが可能となります。ただし、罰則規定の内容については、労働基準法や他の労働関連法規に反しないよう注意が必要です。

就業規則違反の種類と程度

軽微な違反行為

就業規則違反には、軽微なものから重大なものまで、様々な種類や程度があります。例えば、遅刻や早退、私用外出、職場での私語などは、比較的軽微な違反行為といえるでしょう。これらの行為は、業務への支障は小さいものの、頻繁に繰り返されると職場の秩序を乱す原因となります。軽微な違反行為に対しては、口頭による注意や文書による警告などの措置が考えられます。

重大な違反行為

一方、職場の秩序や業務に重大な悪影響を及ぼす違反行為も存在します。例えば、職場での暴力や暴言、セクシュアルハラスメント、企業秘密の漏洩、横領や背任などは、重大な違反行為といえるでしょう。これらの行為は、会社や他の労働者に深刻な被害を与え、信頼関係を破壊する可能性があります。重大な違反行為に対しては、懲戒解雇を含む厳しい処分が検討されます。

違反行為の反復性と影響度

違反行為の種類や程度を判断する際は、行為の反復性や影響度にも着目する必要があります。同じ違反行為でも、初めて行った場合と繰り返し行っている場合とでは、問題の深刻さが異なります。また、違反行為による業務への支障や他の労働者への影響の大きさも、処分を検討する上で重要な要素となります。罰則の設定や適用にあたっては、違反行為の反復性と影響度を総合的に勘案することが求められます。

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罰則の種類と内容

譴責・訓告

譴責・訓告は、比較的軽微な違反行為に対して行われる処分です。口頭または文書で注意を促し、反省を求める措置といえます。譴責・訓告は、懲戒処分の中では最も軽い部類に属しますが、労働者に自らの行為を振り返らせ、改善を促す上で一定の効果が期待できます。ただし、安易な譴責・訓告の乱発は、処分の形骸化を招く恐れがあるため注意が必要です。

減給

減給は、一定期間、労働者の賃金を減額する処分です。減給の上限は、1回の額が平均賃金の1日分の半額、総額が一賃金支払期における賃金総額の10分の1までと定められています(労働基準法第91条)。比較的重い違反行為に対して行われることが多い処分といえるでしょう。減給処分を行う際は、適用基準や手続きの適正性に十分な注意が必要です。

出勤停止

出勤停止は、一定期間、労働者を職場に出勤させない処分です。出勤停止期間中は、賃金の支払いが行われないのが一般的です。比較的重い違反行為や、再発防止の必要性が高い場合に行われることが多い処分といえます。出勤停止の期間については、就業規則で明確に定めておくことが大切です。

懲戒解雇

懲戒解雇は、労働者との雇用契約を会社側の意思で一方的に終了させる処分です。懲戒解雇は、最も重い処分であり、労働者に与える影響が大きいため、適用にあたっては細心の注意が求められます。懲戒解雇が有効となるためには、就業規則の規定が合理的であること、処分の理由が客観的に合理的で社会通念上相当と認められることが必要とされます。

損害賠償請求

就業規則違反により会社に損害が生じた場合、会社は労働者に対して損害賠償を請求することができます。損害賠償請求は、民法上の不法行為や債務不履行に基づく請求となります。賠償額の算定や請求の手続きについては、弁護士など法律の専門家と連携しながら進めることが大切です。

罰則規定の設定方法

違反行為と罰則のバランス

罰則規定を設定する際は、違反行為の内容や程度に見合った適切な処分を定める必要があります。軽微な違反に対して重い処分を設定したり、重大な違反に対して軽い処分を設定したりすることは避けなければなりません。違反行為と罰則のバランスを欠いた規定は、労働者の納得を得られず、かえって職場の秩序を乱す結果を招きかねません。

罰則の適用基準の明確化

罰則規定には、どのような違反行為にどのような処分を行うのか、適用基準を明確に定めることが大切です。抽象的で曖昧な規定では、恣意的な処分の温床となるおそれがあります。違反行為の類型や程度に応じた処分の基準を可能な限り具体的に定め、労働者に周知することが求められます。

労働者代表との協議

罰則規定の設定や変更を行う際は、労働者代表との協議が必要です。労働者代表は、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合はその労働組合、ない場合は労働者の過半数を代表する者を指します。労働者代表との協議を通じて、労働者の意見を聴取し、規定の合理性や妥当性を確保することが大切です。

罰則の運用における注意点

事実関係の適切な調査

罰則を適用する際は、違反行為の事実関係を適切に調査することが大切です。安易な思い込みや憶測に基づく処分は厳に慎まなければなりません。事実関係の調査にあたっては、当事者や関係者から丁寧に事情を聴取し、客観的な証拠を収集することが求められます。調査の過程では、プライバシーに配慮し、公正中立な姿勢を保つことも重要です。

処分の公平性と一貫性の確保

罰則の運用では、処分の公平性と一貫性を確保することが大切です。同じような違反行為には同じような処分を行うことを原則とし、恣意的な処分の発生を防ぐ必要があります。また、過去の処分事例との整合性にも留意が必要です。公平性と一貫性を欠いた処分は、労働者の不信感を招き、職場の士気を低下させる恐れがあります。

処分理由の明示と弁明の機会の付与

処分を行う際は、対象となる労働者に処分理由を明示し、弁明の機会を与えることが大切です。処分理由の明示は、労働者の納得感を高め、トラブルの未然防止につながります。弁明の機会を与えることは、労働者の言い分を聞き、適切な処分を行うための重要なプロセスです。弁明の機会の付与は、処分の適正手続きを担保する上でも欠かせない要素といえるでしょう。

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罰則と法的責任

懲戒解雇の有効性

懲戒解雇が有効となるためには、前述のとおり、就業規則の規定が合理的であること、処分の理由が客観的に合理的で社会通念上相当と認められることが必要です。これらの要件を満たさない懲戒解雇は、裁判で無効と判断されるリスクがあります。懲戒解雇を行う際は、慎重な判断が求められます。

損害賠償請求の可能性

就業規則違反により会社に損害が生じた場合、会社は労働者に対して損害賠償を請求することができます。ただし、損害賠償請求が認められるためには、違反行為と損害との因果関係や損害額について、会社側が立証する必要があります。損害賠償請求を行う際は、十分な証拠の収集と法的な検討が不可欠です。

刑事責任との関係

就業規則違反の中には、刑事責任を問われる可能性のあるものも存在します。例えば、暴行や傷害、窃盗、背任などの行為は、刑法上の犯罪に該当する可能性があります。このような行為については、就業規則上の処分とは別に、警察への通報や告訴など、刑事手続きを視野に入れた対応が求められます。

罰則規定の見直しと改善

運用実態の定期的な確認

罰則規定の適切な運用を維持するためには、定期的に運用実態を確認し、必要に応じて見直しや改善を行うことが大切です。処分の件数や内容、労働者の反応などを定期的に分析し、規定の妥当性や運用上の課題を洗い出す必要があります。運用実態の確認を通じて、罰則規定の実効性を高めていくことが求められます。

労働者からの意見聴取

罰則規定の見直しや改善にあたっては、労働者からの意見聴取が重要です。労働者代表との協議に加え、アンケートやヒアリングなどを通じて、幅広く労働者の声を集めることが大切です。労働者からの意見は、規定の問題点や改善の方向性を示唆する貴重な情報源となります。

社会情勢の変化への対応

罰則規定は、社会情勢の変化に合わせて適宜見直しを行うことが求められます。法改正への対応はもちろん、社会の価値観やコンプライアンス意識の変化にも目を配る必要があります。ハラスメントや個人情報保護など、近年重要性が増している課題については、罰則規定での位置付けを検討することも大切です。社会情勢の変化に的確に対応することで、罰則規定の実効性を維持していくことが可能となります。

まとめ

本記事では、就業規則違反の罰則設定と運用について詳しく解説しました。罰則は、就業規則の実効性を高め、職場の秩序を維持するために重要な役割を果たします。一方で、罰則の設定や運用を誤ると、労働者の不満や法的トラブルを招くリスクがあります。罰則規定の設定にあたっては、違反行為と罰則のバランスを取り、適用基準を明確化することが大切です。運用面では、事実関係の適切な調査、処分の公平性と一貫性の確保、処分理由の明示と弁明の機会の付与などが求められます。懲戒解雇や損害賠償請求については、法的な観点からの慎重な検討が不可欠です。定期的な運用実態の確認と労働者からの意見聴取を通じて、罰則規定の継続的な改善を図ることも重要です。適切な罰則規定の設定と運用を通じて、公正で働きやすい職場環境の実現につなげていきましょう。


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